みんなの前でああやって豪語はしたけれど、どう考えても作家にはなれないのだ。
本は大好きだけれど、本の虫というわけではなかったし、10代は文芸書よりも実用書のほうを多く読む、という色気のないものだった(悩める10代だったのだ)。文学部でもなければ、日本や世界の名作に通じているわけでもない。最後に小説を書いたのは中学生のときだし、その頃と変わらずひとに何かを理解してもらうのは難しいし。
数多くいる小説家の来歴を見る限り、きちんと古典に傾倒している人が多い。もちろん多いというだけだけれど、やはりなにかしらの由緒みたいなものは必要だと考えてしまう。
児童文学や小説を書きたかった。なんでも好きなものを紙の上に踊らせていたときの話だ。
得体の知れないものに打ちのめされる前の話だ。
自分は幸せにはなれないと結論づける前の話いつだか、思いはどこかへ飛んでいってしまった。
1ヶ月くらい前、ひょんなことからここに書き残すことをはじめて、飛んでいったものが戻ってきた。
心を揺らされる出来事があったとき、文章を書きたくなる衝動が、たしかにある。それに素直になったここひと月、重りがとれたみたいにすごく楽だったのだ。
私のような凡人でも、なにかを表現しなくては生きていかれないのかもしれない。人間はふしぎだ。
文学についてのルーツがなんにもない以上、辿りつけるところなんてたかが知れている、と、冷静に思う。
でも、てにをはや、修飾語すらまともな順番で扱えない自分の文章とどう向き合えばよいのかは、これからの自分が決めていくことだ。今までの経験の浅さからではなく。
たくさんの物語を深く知る。虚構も現実もたいせつにする。いろいろな可能性を信じられるくらい、ひらいておく努力をする。そういう自分でいられる選択をしていく。
いつか自身で新しいものを紡ぎあげられるくらいの人間になれるといい。それが30歳でも50歳でもべつにいいのだ。もっと言えば、作家にはなれなくても。
とりあえず、まえに六本木の文喫で見つけた、この本でも読んでみるんだー。
- 作者: マリオバルガス=リョサ,Mario Vargas‐Llosa,木村栄一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/07/01
- メディア: 単行本
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