晴れ着とひどい気持ち

きらきらした目で「卒業式、袴は着るの?」と訊かれて、友達を遠く感じた。

 

晴れ着を着る自分を想像すると死にたくなる。

自分の感情にはだいたい理由をつけているのだが、これの理由だけさっぱりわからない。

 

成人式で振袖を着せてもらったときの絶望感、ひどい気持ちを思い出して、この前、袴を着るのも断った。

たぶん一生ウエディングドレスも着れない。

お金がかからないのはよいことだし、このくらいの悲しみなら持っておいても今は支障がないので、このままでいいかと思う。

何に意固地になっているんだろうな。

 

友達には着ないよとだけ伝えた。一生分かり合えない。伝わらない感情を伝えようとする寒さと徒労は他にない。例えば部活で怪我をすることが嬉しいと思っていた気持ちなんて、絶対に伝わらない。悲しい。いつだか反発を抱いていたのは、陽の世界を正しいと盲信している人たちが恨めしかったからだろうな。

必要がない齟齬は伝えなくていい、だいたいの臆病な大人が知っていること。だからこそ通じ合えることが尊いとも。