ひらめかせる

足首まであるベージュのマキシスカートが、ひらめくのがうれしい。

 

私はけっこうなおしゃれ音痴である。

おしゃれすることは申し訳ないことだとかなんだとひねくれていた時期があったのもあり、ファッションを楽しむことに関しては、世間の女の子たちよりはたぶん遅れている。

気を付けているつもりなのに、素材が合っていないことだってしょっちゅうだし、ぴんときて選んだ色は奇抜すぎたり。あとは体型のおかげでずいぶん悲しい思いをしてきた。どうしてあの人がかっこよくかわいく着られる服は自分には似合わないんだろうなあ、と。

 

 

この夏選んだ服の中に、ベージュのマキシスカートがある。(どうでもいいと思うのだけどちょっと聞いてほしい)足首まであって、マキシスカートの中でもけっこう長い類のものだ。何か所か切り替えがあり、布地が多くてすこし重いけれど、そのぶん、重力にそってすとんと落ちる。少し動くと、流れるようにひらめく。これが気に入ったのだった。

 

気がつくと、そのスカートとけっこうな時間を共にしていた。

靴はあまりたくさん持っていないけれど、私の持っているスニーカーにもサンダルにもすんなり合ってくれる。主張が強くないから、ピンクやフリルを素直に身につけられない自分でもさりげなく身にまとえる。

最初は階段なんかで踏んでしまいそうになったこともあるけれど、気をつけていればなんてことはない。この前なんていっしょに川遊びしてきた。手で少しまくしあげて、澄んだ水たまりに先のほうから足をするりとしのばせると、その日の日差しを裏切るようにつめたかった。裾を濡らさないように気を付けながら静かに遊ぶのも、けっこう風情があった。

 

足元を見下ろして、鏡を見て、ご機嫌になれる。これが良い服ってことだなと思う。自分の時間を何倍にも豊かにしてくれる服。おしゃれ音痴でも、こういうものには出会えるものだ。

 

 

今日も、マキシスカートをはいて、ひらひら歩いてきた。

いつか着れなくなるときまで、大事にしたい。この服でつくる思い出はきっと良いものになる。