新千歳と空と雪原

新千歳から飛び立った直後の、穏やかな北海道の海が、途方もなく美しかった。

 


太陽の反射で海の表面が白く見えて、何者も踏みこんでいない雪原みたいだった。これが本当に雪原だったとしたら、犬ぞりとともに走る冒険家の姿が目に見える。植村直己はこんな平原を進んでいたのかもしれないな。けども現実には、ぽつりぽつりと小船が進むようすが見られるだけだ。船の後に続く軌跡が同心円状になっている。いつか学んだ物理学の波動の分野を思い出す。船の軌跡の美しさの法則を解き明かすために人生をかける人もいるのだろう。その人の人生は美しかったのだろうか。

 


太陽はあんなに遠いのに、わたしの顔を照りつける。すざまじいパワーである。海の平原に、本物の形そのままの、まだらな雲の影を作る。

わたしは日焼けしたくなくて窓を閉めようとしたのに、結局いつまでも見つめてしまった。何度も何度も乗った故郷発の飛行機。どうして今さらこんな風景を見せてきたのだろう。

 


感傷的になっているのは、チャットモンチーの耳鳴りを聞いているせいかも。