悪い大人でいたい。そんなことを本気で響かせるバンドがあったことを、今更知った。
bloodthirsty butchers- Jack Nicolson
君がその先大人になっても
悪い大人の手本でいたいんだ
久々にきたー。
青くさい歌詞が元々好きというのもあるのだけど、それにしても真っすぐすぎないか。
理想を持てない中でのせめてもの夢として、「いい叔母さんになる」ことを自分に掲げていた。
様々な理論が錯綜している私の専攻の心理学分野で、妙に心に残っているのは、
「子育て論に絶対は無いが、研究ではっきりしているのは"子の生涯の幸福度は、両親が楽しく人生を過ごしていることにかなりの確率で関係している"ことである」
という言説である。
結婚も子どももできたらするものと考えている人間にとって役に立つ理論かどうかは神のみぞ知るという感じだが、この価値観は私に根を下ろした。両親や身近な大人はとても生き生きしているように私には思えなかったし、社会はそんなものという諦念を持っている。しかし、少なくとも身近で愛しい存在である甥と姪には、そんな人間像を見せてやりたいと思うようになった。
が、しかしである、私はどこかで欺瞞を抱えていたぞと気がついた。『Jack Nicolson』の歌詞を見たときに、そもそも私はいい大人になりたいと本気で思っているのか?と疑った。
社会において地位を高めるとか評価を受けるとか、上昇志向の価値観はある程度抜けたつもりでいたが、どうやら社会から子どもへと、指標をすげ替えただけだったらしい。結局評価、人への影響力、そんなことを真面目にものさしにしようとしていたらしい。ああ、本末転倒。
ダメと言われりゃ意地クソ張ってでも
繰り返しの様な人生に見えても
君がこの先大人になっても
悪い大人の手本でいたいんだ
悪い大人でいいじゃないか。
本曲のMVは、うだつのあがらない主人公を中心に描いた4分間のアニメーションである。主人公はいい大人とは言えない(とりあえず、私の定義によれば)が、4分間のストーリーの中に、人間くさい美しさが覗く。
このMVを見つめていくうちに、いつの間にかメロディが深く染み込んできて、歌詞を素直に受け入れることができた。
ブッチャーズを聴くと毎度不思議な音楽体験をする。まだ私はブッチャーズを語れるほど知っているわけではないが、こういう事情でブッチャーズに惹かれたことは明記しておく。
banging the drumは問答無用で好きだけども。